胃潰瘍の治療を学ぶ。薬物療法と原因による治療法の変化とは?

2022年12月30日

胃潰瘍の治療について

胃潰瘍の治療イメージ

胃潰瘍は主に薬で治療を行います

胃潰瘍は何らかの要因によって胃の粘膜の抵抗量が低下したときに発生する疾患です。

胃の粘膜が胃酸によって消化されて傷ついている状態で、治療は主に薬物療法で行われます。
胃潰瘍の薬物療法は、

  • 過剰な胃酸の分泌を抑制する薬。
  • 胃の粘膜を保護する薬。
  • 胃酸の酸性を中和する薬。

上記のような作用を持つ治療薬を中心に治療します。

胃潰瘍は原因によって治療手順が違います。

胃潰瘍の原因には以下の種類があります。

  • 胃にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が繁殖している
  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の服用による副作用
  • 過度なストレスや食生活の乱れ
  • 飲酒、喫煙

ストレスや食生活の乱れ、飲酒、喫煙が原因で起きた胃潰瘍は重症化していない限り、薬を服用して治療を開始することができます。
その他の2つの原因による胃潰瘍の場合は治療の手順が変化します。

ピロリ菌が原因で胃潰瘍が起きている場合。

胃潰瘍がピロリ菌によって引き起こされている場合、プロトンポンプ阻害薬(過剰な胃酸の分泌を抑える薬)と2種類の抗菌薬を併用して治療を行います。

ピロリ菌が原因の胃潰瘍は、ピロリ菌が分泌しているアンモニアなどの成分によって粘膜が傷つくことで起きています。
検査を行ってピロリ菌が胃に生息することがわかった場合、3種類の薬(プロトンポンプ阻害薬と抗菌薬2剤)を飲んでピロリ菌を駆除する必要があります。
服用は1週間ほどで、期間が過ぎたら再度検査し、ピロリ菌の有無を確認します。
この治療方法の成功率は約7~8割と言われており、服用した方の体質や正しく服用出来ていない場合など失敗してしまう可能性もあります。
失敗してしまった場合はもう1週間、同じ治療方法を行って治療することができます。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の副作用で胃潰瘍が起きている場合。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の副作用で起きる胃潰瘍の治療は、まずNSAIDsの服用を中止するところから始めます。

NSAIDsが原因の胃潰瘍は、NSAIDsがCOX(シクロオキシゲナーゼ)と呼ばれる粘膜や血管の維持、痛みなどに関係する酵素の働きを抑えてしまう事によって起きています。
その為、NSAIDsが原因の胃潰瘍を治療するにはNSAIDsの服用を中止しなければいけません。
NSAIDsの服用を中止した後の治療は通常の胃潰瘍の治療と変わらず、薬物療法を行っていきます。
中には、病気の関係でNSAIDsの服用を中止できない方もいます。
その場合はNSAIDsを服用しながら胃潰瘍の治療薬も併用していきます。

重症化した胃潰瘍の治療について

胃から出血が起きている場合、まずは止血を行います。

出血を伴う胃潰瘍の治療は、まずは止血を行うところから治療を開始します。
「内視鏡的止血術」と呼ばれる治療方法を行い、内視鏡を体内にいれて患部を特定し、止血剤を注射したり、レーザーで患部を焼くなどの方法で止血を行います。
患部からの出血を抑えたのち、胃潰瘍の原因を特定し、原因に合わせて治療を行っていきます。
出血が起きている時点で胃潰瘍は重症化していると考えられますが、この方法で止血を行っても効果がない場合や完全に胃に穴が開いてしまっている場合は緊急手術を行う必要も出てきます。
また、内視鏡的止血術を行う場合、約2週間程度の入院期間が必要となってきます。
この入院期間は胃潰瘍を治療する為だけでなく、胃からの出血で失った血液を補充するための期間でもあります。
人によっては1ヵ月ほど入院しなければいけなくなる方もいらっしゃるので、胃潰瘍は可能な限り早期発見して重症化させないようにしましょう。

胃潰瘍の治療で大切なこと

治療薬は完治するまで飲み続けよう。

胃潰瘍を治療する際、服用を開始してからすぐ自覚症状が薄くなっていきます。
その為、治ったと思って薬の服用をやめてしまう方が多くいますが、胃潰瘍は数日で治るような疾患ではありません。
途中で薬の服用をやめてしまうと完治せず、症状が再発します。

自覚症状が無くなったからと言って薬の服用は中止せず、決められた期間、治療薬を服用し続けましょう。

ストレスは可能な限り発散する。

過度なストレスは胃酸の分泌を増やしたり、胃の粘膜の抵抗力を衰えさせることになります。
治療薬を飲んでも過度なストレスによって治りが悪く、1度治っても再発してしまうという方は多くいます。

  • 適度な運動を行う。
  • 生活習慣を改善する。
  • ストレスを解消できる趣味を行う。
  • ストレスの原因となっている要素を取り除く。

などを意識し、ストレスをため込みすぎないようにしましょう。

食生活に注意しよう。

乱れた食生活は胃潰瘍の治療を遅くし、再発率を高めることになります。

  • 暴飲暴食。
  • 不規則な時間での食事。
  • 脂肪やたんぱく質の多い消化に時間のかかる食べ物。
  • 刺激の強い食べ物。

これらの原因によって胃酸の分泌が増えたり、胃に刺激を与えて胃潰瘍の治療が遅くなってしまいます。
胃潰瘍の治療や予防に食生活の改善はとても重要な項目の1つなのです。