胃潰瘍と食事、悪化を防ぐ注意点を学ぶ
胃潰瘍の時には、食事療法が非常に重要です。胃に優しい食べ物を選び、消化の悪い食べ物や刺激の強い食べ物は避けましょう。
消化しやすく、胃の粘膜を保護・治癒するのに有用な食べ物を摂りましょう。胃潰瘍の原因菌であるピロリ菌に対しては、乳酸菌を含んだヨーグルトなども有効です。
料理をする際には、じっくり煮込んで柔らかくするとお腹に優しくなります。最も重要な事として、しっかりと噛んで唾液を分泌させれば消化しやすくなります。
胃潰瘍と食生活の関係
胃の負担を減らして治療をスムーズに。
胃潰瘍の治療は基本的に薬物療法となりますが、並行して食事療法も行います。
胃潰瘍では、胃の粘膜の抵抗力が下がっています。胃に負担がかかると、治りが遅くなります。治った後も、粘膜の抵抗力が低いと再発しやすくなります。
胃潰瘍の治療および再発抑制にあたっては、胃の抵抗力を修復する必要があります。できるだけ胃の負担を抑える食事を心がけましょう。
ここでは胃潰瘍の食事療法に適した食べ物、そして適切な食べ方を説明します。
胃潰瘍の食事療法でおすすめの食べ物
胃潰瘍の食事療法では、胃に優しい食べ物を摂るようにしましょう。
「胃に優しい」の定義は以下の3つです。
- 胃の粘膜を守ってくれる
- 消化を助けてくれる
- 胃の傷の治癒を助けてくれる
胃の粘膜を守ってくれる食べ物
胃の粘膜を守ってくれる食べ物とは、アラキドン酸やムチン、ビタミンU・A・Eなどの栄養を含む食べ物です。
これらの成分には胃酸の分泌を抑える効果や胃壁の老化を防ぐ作用があます。摂取することで、胃の粘膜のダメージを減らしてくれます。
代表的な食べ物は以下の6つです。
- 大豆製品
- 山芋(とろろ等)
- キャベツ
- かぼちゃ
- オクラ
- トマト
特にキャベツに多く含まれるビタミンUには粘膜を保護するだけでなく、胃の修復にも効果を発揮します。
胃腸薬キャベジンコーワの原料としても知られ、胃潰瘍によく効く代表的な食べ物です。
山芋はすりおろしてとろろにすると、食べやすく消化に良いのでおすすめです。
トマトの皮は消化に悪いので、トマトは皮をむいて食べるようにしましょう。
消化を助けてくれる食べ物
消化を手助けしてくれる食べ物とは、アミラーゼやプロテアーゼなどの分解酵素を含んだ食べ物です。
食べ物が胃に留まる時間が短くなれば、胃の負担は軽減します。分解酵素を含んだ食べ物は、消化を促進してくれます。
代表的な食べ物は以下の6つです。
- 大根
- カブ
- 納豆(ひきわり納豆など)
- 長芋
- 玉ねぎ
などの食品が挙げられます。
特に大根はアミラーゼとプロテアーゼを両方とも含んでいるので、胃の負担を軽減するのにうってつけです。
分解酵素は熱に弱いので、効果を活かすためにも食べるときは生のまま食べるようにしましょう。
大根おろしは生のままで消化にも良いおすすめの摂取方法です。ただし大根おろしはすぐに酸化しやすく、時間とともにビタミンCが減っていきます。味もどんどん苦くなってしまいますので、大根は食べる直前におろすようにしましょう。
胃の傷の治癒を助けてくれる食べ物
胃の粘膜を治癒するには、多くのたんぱく質が必要になります。治療をスムーズに進めるためにも、できるだけタンパク質を摂取する必要があります。
ただしタンパク質の中には、消化に時間がかかってしまう食べ物もあります。
胃への負担を抑えるためにも、質の高いたんぱく質を摂ることが大切です。
代表的な食べ物は以下の6つです。
- 卵(火を通した半熟卵など)
- 鶏ささみ
- 身が柔らかい白身魚(カレイやヒラメなど)
- 湯豆腐
- はんぺんなどのすり身
- 牡蠣
亜鉛を胃潰瘍の方が摂取したら治癒が早まったという報告もあるので、有効性が期待できます。亜鉛を豊富に含んだ食べ物として代表的なのが牡蠣です。
「お魚は火を通さないと消化に悪い」というイメージがありますが、タンパク質は加熱するほど硬くなってしまいます。
実は、刺身で食べるほうが煮魚や焼き魚よりも消化に良いのです。白身魚を刺身にして食べれば、やわらかくて消化にも良いのでおすすめです。
ピロリ菌対策として乳酸菌OLL2716株を含んだヨーグルトが効果的
引用元:「胃で働く乳酸菌」の特徴とは 明治プロビオヨーグルトLG21が刷新: J-CAST トレンド【全文表示】
胃に優しい食べ物に加え、ヨーグルトを習慣的に食べるのもおすすめ。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は体に常駐している善玉菌です。乳酸菌には、胃潰瘍の原因菌であるピロリ菌を撃退する働きがあります。
特に「乳酸菌OLL2716株」が胃潰瘍に効果的であることがわかっています。
乳酸菌OLL2716株は主に以下の特徴があります。
- 強力な胃酸の中でも生きられる
- 栄養分が少ない胃の中で活動できる
- ピロリ菌を弱体化する
- ピロリ菌が多い場所に定着できる
これらの事から、乳酸菌OLL2716株は胃潰瘍の治療において非常に有用な菌と言えます。
乳酸菌OLL2716株を含んだヨーグルトとして、「明治プロビオヨーグルト」などがあります。
優れた抗菌作用がある「マヌカハニー」もおすすめ。
引用元:マヌカハニーの効果【健康生活へおすすめの食べ方と注意点】かわしま屋
マヌカハニーは、「マヌカ」という花からとれるはちみつです。厳密に言えば、はちみつではなく花のみつです。マヌカはニュージーランドのごく一部に自生している木です。
マヌカハニーには、MGO(メチルグリオキサール)という成分が豊富に含まれています。このMGOには、強力な抗菌作用があります。ピロリ菌に対しても、活動を抑えて除菌をする効果が認められています。
胃潰瘍に対して効果が期待できるのは、マヌカハニーの中でもMGOの含有値が100以上の食品です。
摂取方法として1日3回、食事の30分前に5gを摂ることが推奨されています。はちみつはヨーグルトとも相性が良いので、一緒に食べれば美味しく効果アップできます。
胃潰瘍の食事療法で避けるべき食品
胃潰瘍の食事療法では、胃の負担になるような食べ物を極力避けましょう。
胃に負担をかける食べ物は、以下の項目に当てはまるものです。
- 質の悪いたんぱく質など、消化に時間のかかる食べ物
- 天ぷらや揚げ物など、脂質を多く含む食べ物
- 辛味や酸味など、刺激が強い食べ物(からし、香辛料など)
- カフェインを含む食べ物や飲み物(コーヒー、緑茶など)
- 極度に熱かったり、冷たかったりする食べ物(アイスなど)
- アルコールや炭酸飲料などの飲み物
- お菓子類(ケーキ、チョコレート、あんこが入った和菓子など)
上記の食べ物は胃を刺激して胃酸の分泌を増やしたり、胃の防御機能を弱めてしまいます。
食事療法を円滑に進めるためにも、上記の食品はできるだけ控えましょう。
その他にも、食事療法に適した食べ物および避けるべき食べ物は主に以下の通りです。
適している | 避けるべき | |
主食 | おかゆ、雑炊、うどん、白米、食パン、そうめん、もち、ロールパン | ラーメン、カレーライス、赤飯、玄米、チャーハン、デニッシュ、全粒粉パン、そば、寿司 |
おかず | 豆腐、納豆(特にひきわり)、チーズ、バター、マヨネーズ、鶏ささみ、レバー、キャベツ、にんじん、ブロッコリーの葉、かぼちゃ、牡蠣、脂の少ない刺身、じゃがいも、味噌汁 | 焼肉、天ぷら、唐揚げ、牛肉や豚肉の脂身、ベーコン、ハム、脂肪分の多い魚、繊維の多い食べ物(ごぼう、しいたけ、れんこん、ひじき、たけのこ等)、硬い食べ物(貝類、たこ、いか、ナッツ類など)、香辛料 |
デザート、間食 | ヨーグルト、りんご、バナナ、カステラ、プリン | 柑橘類(みかん等)、パイナップル、チョコレート、ケーキ、ようかん、アイスクリーム |
飲み物 | 牛乳(ホットミルクなど)、豆乳、ヤクルト、白湯 | 炭酸飲料、コーヒー、お茶、お酒 |
食べ物ではありませんが、タバコは胃酸の酸性を高めて胃の防御機能を下げます。
胃潰瘍の治療を行うときは、できるだけ禁煙するようにしましょう。
胃潰瘍の食事療法で心がけておきたいこと
胃潰瘍の治療や再発予防には、規則正しい食生活が大切です。
暴飲暴食や早食いは胃の負担が非常に多くなるので厳禁です。
他にも、以下のことに注意して食べましょう。
- 食事は規則正しい習慣で食べる。
- 毎日3食、かかさず食事をする。
- 食事はよく噛み、ゆっくり食べる。
- 満腹になるまで食べず、腹八分目を意識する。
- 濃い味は避けて、薄味を心掛ける。
自己判断での絶食(断食)はリスクをともないますのでやめましょう。
「胃の負担を減らすために」と安易に絶食(断食)してはいけません。
重度の胃潰瘍に限り、絶食を治療として行う場合もありますが、点滴で絶食中の栄養を補う前提で行われます。
間違った方法で絶食を行うと、胃の負担を増やします。治療に支障が出たり、症状が悪化する可能性もあります。
長時間にわたって胃が空っぽの状態が続くと、胃酸の濃度が高くなって痛みだす原因となります。
自己判断で絶食を行わず、よく噛んでゆっくり3食たべましょう。
消化を行いやすいように工夫して食べましょう。
引用元:現代人の宿命とあきらめないで 胃の不快感|健康情報|一般財団法人 蓼科笹類植物園
消化されやすいように調理方法や食べ方に工夫し、胃の負担を減らしましょう。
食品が胃で消化される時、同じ食べ物でも硬さによって消化される時間が変わってきます。
よく煮て柔らかく調理することで消化されやすくなり、胃への負担を減らすことができます。
最も消化に良いのは、食べ物をよく噛んで唾液を分泌させることです。胃潰瘍の治療中はしっかりと噛んでから飲み込むようにしましょう。
症状の回復に合わせて、少しずつ通常に戻していきます。
胃潰瘍の時は柔らかく調理したり、よく噛んで消化を行いやすいように工夫して食べましょう。
食事は「楽しく和やかに」を心がけましょう。
胃潰瘍の時、食べ物や食べ方に注意するのは非常に大切なことです。
ただし、過剰に意識しすぎて、食事にストレスを感じてしまうと治療効果が薄くなってしまいます。食事療法において大事なのは「食事は楽しく和やかに行う」ことです。
ストレスは胃酸の分泌を増やしたり、胃の防御機能を低下させます。食事そのものにストレスを感じてしまうと、胃の負担が増えてしまいます。食べ物や食べ方に細心の注意をはらっても、ストレスを感じると効果が十分に得られません。
メニューや治療方法などを意識することも必要ですが、がっちり気にしすぎてストレスを感じるのも良くありません。「あっ、胃に悪いもの食べちゃった」と思っても食べてしまったものは仕方ありませんので、あまり気にしないでおきましょう。
食事は適度に注意しつつ、ストレスにならぬようゆっくり楽しく食べましょう。
胃潰瘍の手術をした後の食事
胃潰瘍の手術を行うと、胃が小さくなったり短くなったりします。1回に食べられる量が減り、栄養が不足してしまいがちです。
こういった場合は無理をせず、食事量を少なめにして回数を増やしましょう。退院2ヶ月後までの間は、食事の回数を5~6回に増やします。間食をする際にもお菓子を避けて消化の良い食べ物にしましょう。
最初のうちはおかゆ等の流動食を食べ、回復してきたら柔らかめに炊いたご飯に切り替えます。繊維の多い食べ物や刺激の強い食べ物、消化に悪い食べ物は避けましょう。
食事はよく噛んで食べ、和やかに楽しく過ごしましょう。食後はすぐに動いたり乗り物に乗ったりせず、20~30分の食休みを取りましょう。