第14回日本創傷外科学会総会(2022年)レポート
第14回日本創傷外科学会総会・学術集会(2022)まとめ
2022年7月に開催された第14回日本創傷外科学会総会・学術集会について、その開催概要・会場・テーマ・構成などを整理しました。過去の学会情報として振り返るのに便利なよう、基本情報からプログラム構成までをまとめています。
開催概要
本学会は、以下の通り開催されました。
- 会期:2022年7月14日(木)〜 7月15日(金)
- 会長:寺師 浩人 教授(神戸大学 形成外科)
- 会場:神戸市中央区北野町1丁目
- テーマ:「創傷、その先にあるもの」
- 主催:日本創傷外科学会(幹事校:神戸大学 形成外科)
プログラム構成と内容
講演・セッション
この学術集会では、さまざまな形式の講演やセッションが組まれていました。主な構成は以下の通りです。
- 会長講演:「私と創傷」 — 会長である寺師 浩人 教授による基調講演
- 特別講演:社会・倫理を意識した内容を含む、多角的テーマの講演
- 海外招待講演:非治癒性糖尿病性足創に対する最新の補助療法などを扱う講演
- 教育講演:顎骨壊死の理解、臨床研究の倫理など、多岐にわたる臨床・研究テーマが紹介されました
学術セッション(シンポジウム等)
複数のシンポジウムが企画され、以下のようなテーマが扱われました。いずれも「創傷」の治療・管理・再発予防などに焦点をあてています。
- 糖尿病性足潰瘍 — 再発予防、装具の限界、将来的な管理
- NPWT(陰圧閉鎖療法)の未来
- 下腿・足関節開放性骨折 — 長期成績を改善する初期治療
- 放射線潰瘍 — 植皮か皮弁か、再発リスクを踏まえた治療戦略
- 膠原病性潰瘍の包括的検討
- CLTI(慢性下肢虚血) — 血行再建の時期、フレイル予防も含めた管理
- 再生医療による創傷発症予防、神経再生への応用
- 在宅医療での創傷管理(2025年を見越して)
- 足病患者へのACP(advance care planning)を含む包括医療
意義と「その先にあるもの」
テーマとなっていた「創傷、その先にあるもの」は、単に“きずを治す”“傷を塞ぐ”という即時的な治療だけでなく、再発予防、長期管理、QOL(生活の質)、在宅医療、社会的支援、そして将来的な再生医療や倫理的側面まで視野に入れた包括的な創傷ケアの未来を示すものでした。学術集会の構成も、こうした多層的・多角的視点を反映していました。
臨床と研究の橋渡し
糖尿病性潰瘍、放射線潰瘍、骨折創傷、慢性潰瘍など、臨床で直面する課題は単純な治療だけでは解決できず、再発防止や長期管理、生活背景を含めたケアが重要です。一方で、再生医療や先端治療、在宅医療や倫理の観点も取り入れた新しいアプローチが示され、従来の“創傷外科”の枠を超える試みが明確に提示されました。
まとめ
第14回日本創傷外科学会総会・学術集会は、創傷治療の「その先」にある未来 — 再発予防、在宅医療、再生医療、倫理、そして患者中心の包括ケア — を見据えた議論が展開された意義深い集会でした。創傷医療や形成外科領域の発展を考えるうえで重要な示唆に富む内容だったと言えるでしょう。
なお、本集会の詳細プログラムや演題一覧は、公式サイトにてご覧いただけます。学会公式ページ
