JISAダイバーシティWG 第1回会合レポート/情報サービス業界の女性活躍と多様性促進へ
JISA「広報・人材委員会 人材部会 ダイバーシティWG」とは ― 目的と背景を整理
日本の情報サービス業界を代表する業界団体、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)が、業界全体の多様性と働き方改革を推進すべく設置したのが「ダイバーシティWG(ワーキンググループ)」です。本記事では、同グループの目的、設立背景、第1回会合の内容と今後の展望を整理します。
ダイバーシティWG設立の背景
情報サービス産業は長時間労働や男性中心の職場構造などが指摘されることがあり、業界として働き方改革や多様性の推進が求められてきました。そんな中、JISAは「多様な人材が育ち、活躍できる環境を整備する」ことを目指し、組織の責任として“働きやすさ”と“多様性の尊重”に取り組む必要を認識。そこで人材・広報の枠組みの中に「ダイバーシティWG」を設置しました。
このWGの目的は、単に女性の雇用を増やすだけではなく、管理職や高度専門職など指導的地位における女性比率を高め、情報サービス産業全体の構造改革を促すことにあります。実際、目標として「管理職/スキル標準レベル5相当以上の専門職における女性比率 30%」を掲げています。
このような取り組みによって、従来型の“受託開発一本足打法”や、旧来の働き方にとらわれない新しい業界の姿を模索しています。
第1回ダイバーシティWG会合の内容
このWGの第1回会合は、平成24年6月7日に開催されました。会合では以下のような内容について議論・確認が行われています。
座長には舟橋千鶴子 氏(ユース・情報システム開発株式会社 代表取締役)、参加は委員8名、そしてオブザーバとして厚生労働省の均等業務指導室からも参加があったとのことです。
主な議題は以下の通りでした:
- 前年度(平成23年度)の活動内容の総括
- 今年度(平成24年度)以降の活動方針の検討
- 具体的な取り組み案として、女性活躍事例の紹介セミナー、経営層へのヒアリング、賛同企業の拡大および公開、女性活躍度の「見える化」インフラ整備、など
過去には、同協会の行動憲章の改訂や、ポジティブ・アクション「見える化」事業への協力なども行われており、今回のWG設置と活動はその延長線上にあります。
JISAとしては、業界全体にわたる多様性の定着、構造改革の起点と位置づけており、「多様な人材が活躍できる業界へ」という強い意志が感じられます。
なぜ「女性管理職 30%」という目標か
多くの日本の情報サービス企業では、管理職や高度専門職における女性の割合が低く、女性のキャリア構築が難しい現状があります。そのため、単に“入社時点での女性比率”だけでなく、キャリアの上流・管理職層における女性の占める割合を高めることで、業界全体の構造を変えたいという狙いがあるようです。
「管理職や専門職における女性比率 30%」という数値目標を掲げることで、各会員企業にとっても目に見える明確な目標となり、実効性のある取り組みにつながる可能性があります。さらに、女性活躍に限らず、多様な価値観・働き方を受け入れる文化を根付かせることで、若年層・シニア層・性別を問わず働きやすい業界へと転換することを目指しています。
JISA全体の枠組みとダイバーシティWGの位置づけ
JISAは、情報サービス業界における業界団体として、複数の委員会・部会・ワーキンググループを通じて、技術支援、労務・税制、環境、知財、事業モデル改革、そして今回のような人材・多様性といったさまざまなテーマに取り組んでいます。
このような構造の中で、ダイバーシティWGは「広報・人材委員会」の一部として設置されており、単独ではなく、JISAの“人材育成”や“業界改革”という中長期の視点における重要な位置づけを持っています。
このような包括的な取り組みによって、JISAは業界全体の将来像として「多様性を尊重し、働きやすく、革新を起こせる産業」を目指しています。
また、以前から同協会では、受託開発型ビジネスモデルから、より柔軟で付加価値の高いサービス型ビジネスへの移行を促す試みも行っており、構造改革と人材多様化の両輪で業界の再定義を図ろうとしています。
(例:サービス化部会の報告や取り組み)
今後期待されることと課題
ダイバーシティWGの取り組みには大きな期待があります。たとえば:
- 女性だけでなく、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材の参画促進
- 管理職や専門職へのキャリアパスの明示と実効性ある支援
- 業界全体としての働き方改革、長時間労働の是正とワークライフバランスの実現
- 若年層/中途/シニア/性別を問わず「選ばれる産業」への転換
一方で、目標数値を達成するためには、会員企業それぞれの意識改革、具体的な制度設計、人事運用の見直しが必須です。また、単なる“見せかけの多様性”ではなく、実質的な「多様な人材が活躍できる環境づくり」を実現するためには、継続的なフォローアップと透明性の確保が重要となるでしょう。
今後、どのようなセミナーや事例紹介が行われ、どれだけの企業がそれに賛同・参加するのか――それが、情報サービス産業全体の将来を左右する鍵となりそうです。
こうした取り組みを通じて、情報サービス業界がより柔軟で多様に開かれた産業へと変革することに期待したいと思います。
詳細は、以下の公式ページをご覧ください。
JISA ダイバーシティWG 第1回(広報・人材委員会/人材部会)
