全国規模で進む CTEPH レジストリの価値と参加施設の全体像
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)全国レジストリ — 参加施設一覧とその意義
日本国内で、希少疾患である慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の診療と治療成績を把握するために、全国規模で実施されている「CTEPH AC Registry」。その参加施設一覧ページには、日本各地の病院が網羅されており、CTEPH患者の診断・治療を支える医療体制の広がりが見えてきます。この記事では、その一覧の内容を紹介しながら、CTEPHやレジストリの背景もあわせて解説します。
CTEPHとCTEPH AC Registry とは
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、肺動脈内に器質化した血栓が慢性的に残存または再発し、肺血流が障害されることで肺高血圧をきたす希少疾患です。国内では指定難病に指定されており、その診断・治療は高い専門性を必要とします。
CTEPH の治療には、抗凝固療法、血管拡張薬、手術による血栓摘除(PEA)、さらにカテーテルを用いたバルーン肺動脈形成術(BPA)など多様な選択肢があります。しかし、CTEPH は希少疾患であるため、大規模な比較研究を単施設で行うことは困難であり、全国規模での実データ収集が不可欠とされています。
こうした背景から、多施設の協力で実臨床データを収集・解析する目的で設立されたのが「CTEPH AC Registry」です。リアルワールドデータを基盤にした治療成績の評価やエビデンス創出が期待されています。
参加施設一覧 — 全国の病院ネットワーク
CTEPH AC Registry の参加施設一覧ページには、日本全国に及ぶ多くの医療機関が掲載されています。地域ごとに以下のような構成になっています。
- 北海道地区 — 北海道大学病院、札幌医科大学附属病院 など
- 東北地区 — 東北大学病院、福島県立医科大学附属病院 など
- 関東地区 — 千葉大学附属病院、慶應義塾大学病院、東京大学医学部附属病院、順天堂大学病院、東京医科大学病院、東京女子医科大学病院 など
- 中部・北陸地区 — 名古屋大学、金沢大学、信州大学、浜松医科大学、三重大学、山梨大学 など
- 関西地区 — 国立循環器病研究センター、大阪大学、京都大学、神戸大学、奈良県立医科大学 など
- 中国・四国地区 — 岡山医療センター、広島大学病院、松山赤十字病院、呉共済病院 など
- 九州・沖縄地区 — 九州大学病院、久留米大学病院、熊本大学病院、長崎大学病院、鹿児島大学病院、琉球大学病院 など
全国的な医療機関の参加により、地域差の少ない CTPEH 医療体制が構築されています。これにより、全国的な治療実態の把握や地域別の比較分析も可能となります。
東京都近辺の施設例
関東地区には、以下のような東京近郊の主要医療機関が参加しています。
- 慶應義塾大学病院(新宿区)
- 国際医療福祉大学三田病院(港区)
- 東京大学医学部附属病院(文京区)
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院(文京区)
- 東京医科大学病院(新宿区)
- 東京女子医科大学病院(新宿区河田町)
東京都在住の患者でもアクセスしやすい医療機関が複数参加しており、受診場所の選択肢が広いことが特徴です。
なぜ「全国レジストリ」が重要か
希少疾患であるCTEPHでは、単施設で得られる症例数が限られるため、統計的に信頼性の高いデータを得るには多施設共同での情報収集が欠かせません。CTEPH AC Registry は、この課題に応える形で全国規模のデータ収集基盤として機能しています。
全国レジストリの意義として、次の点が挙げられます:
- 全国規模での治療実態の可視化と標準化の促進
- 薬物治療、外科治療、BPA など多様な治療法の効果・安全性評価
- 治療方針決定に役立つエビデンスの蓄積
- 将来的なガイドライン改訂や医療政策への反映
現在、参加施設は40を超え、2025年6月時点で登録症例数は1,924例に到達したと報告されています。今後も、データの蓄積により治療の質向上が期待されています。
今後の展望と患者さんへの影響
CTEPH に対する治療は多様化しつつあり、従来の抗凝固療法や手術に加え、BPA の普及によって治療選択肢が広がっています。これらの治療について適応や効果、安全性、予後を明らかにするためには、引き続き多くの患者データが必要です。
レジストリで収集されたリアルワールドデータは、治療ガイドラインの改訂や医療政策の改善にも寄与する可能性があります。また、全国規模の医療機関連携により、地域格差なく治療にアクセスできる環境づくりが進むことも期待されます。
まとめ
CTEPH は希少疾患ながら治療選択肢が多岐にわたり、その最適化には実臨床データに基づくエビデンスが不可欠です。CTEPH AC Registry の参加施設一覧ページ を見ると、全国の医療機関が協力し治療体制を支えていることがわかります。レジストリが蓄積するデータは、将来の医療改善に欠かせない重要な基盤となるでしょう。
CTEPH やその治療、医療体制に関心のある方にとって、全国レジストリの存在は大きな安心と希望につながる取り組みです。
