京都大学医学部附属病院における医学系研究の情報公開制度とは

京都大学医学部附属病院における「人を対象とする医学系研究」情報公開の仕組み

医療機関や研究機関で行われる臨床研究――特に患者さんのデータや過去の診療記録などを用いた研究について、「倫理審査は通っているのか?」「個人の同意なしで使われていないか?」と不安を抱く方もいるかもしれません。この点について、京都大学医学部附属病院(京大病院)では、「人を対象とする医学系研究に関する情報公開制度」を整備し、研究内容を公開することで透明性を確保しています。

なぜ“情報公開”が行われるのか

医療・医学研究、とくに既存の診療記録や検査データを活用する研究では、研究参加者一人ひとりと別途同意を取らずに実施される場合があります。こうしたケースでも倫理性と透明性が求められるため、京大病院では該当する研究について「情報公開文書」を公開し、どんな研究が実施されているかを広く知らせています。

対象となる研究

公開の対象となるのは、京都大学大学院医学研究科・医学部および京大病院の倫理審査委員会で審査・承認された研究のうち、既に蓄積されたデータや過去の診療記録を用いた研究です。主に、個別の書面同意を取得していないオプトアウト型研究が該当します。

例えば、血液疾患患者由来の細胞を用いた研究や、ステント治療後の抗血小板療法の安全性を検証する研究など、多様なテーマが対象として挙げられています。

どのように情報が公開されているか

京大病院のウェブサイトでは、情報公開文書が一覧形式で閲覧できるよう整備されています。

  • 研究の受付番号
  • 研究責任者名
  • 研究課題名
  • 情報公開文書(PDF)へのリンク

関心のある研究があれば、サイト内にある「情報公開文書の検索ページ」から検索して確認することが可能です。

公開制度の意義と、利用者として知っておきたいこと

この制度の主な意義は、利用者(患者・市民)への説明責任と透明性の確保です。研究を行う側だけでなく、社会に対して「どんな研究を、どのようなデータで行っているのか」を明確に示すことで信頼性向上につながります。

また、公開文書には研究の目的、方法、利用データの種類、データ管理体制、問い合わせ先などが記載されており、データ利用を望まない場合には申し出により研究対象から除外される仕組みも設けられています。このため、個別同意を省略する研究であっても、個人の意思を尊重できる運用となっています。

どうやって調べるか ― 公開文書へのアクセス方法

公開情報にアクセスするには、京大病院のウェブサイト内にある「人を対象とする医学系研究に関する情報公開文書の検索ページ」を利用します。関心分野や診療科、研究責任者名、受付番号などで絞り込みが可能です。

また、公開リストに記載されていない研究でも、問い合わせ窓口を通して情報を確認できる場合があります。ウェブページには「上記検索ページに非掲載の情報公開文書はこちら」という案内もあります。

制度の背景:オプトアウトと研究倫理

こうした公開制度は、一般的な「同意取得(インフォームド・コンセント)」とは異なり、過去データを利用する研究などで同意取得が困難な場合に適用される「オプトアウト型研究」の枠組みに基づいています。倫理審査を受けたうえで情報公開を行うことで、研究の推進と倫理性・透明性の両立を図っています。

まとめ:研究と社会の橋をつなぐ情報公開

医療データを用いた研究は、病気の理解や新しい治療法の開発、医療の質向上につながる可能性を秘めています。しかしその一方で、個人情報やプライバシー保護、倫理的配慮が欠かせません。

京都大学/京大病院の「人を対象とする医学系研究に関する情報公開制度」は、研究に対する社会的責任と透明性を具体化した取り組みと言えます。関心を持たれた方は、ぜひ公開文書を検索してみてください。

なお、対象となる研究内容や公開方法は更新される場合があります。最新情報については公式サイトをご確認ください。

京都大学医学部附属病院 「人を対象とする医学系研究に関する情報公開」ページ