W.L.B. が女性産婦人科医を支える理由と制度内容を解説
女性医師の働き続けやすさを支える W.L.B. の支援内容とは
産婦人科の現場では、出産・育児などライフステージの変化に対応しつつ医師としてキャリアを続けることは決して容易ではありません。特に女性医師にとって、出産後や子育て期における復職や勤務条件の調整は大きな壁となります。そこで注目されているのが、日本産科婦人科学会(JSOG)が設けたワーク・ライフ・バランス支援制度 ― W.L.B. 日本産科婦人科学会ワーク・ライフ・バランス(以下「W.L.B.」) ― です。本記事では、その支援内容を詳しく紹介します。
なぜ W.L.B. が必要か
多くの女性医師は、新しく産婦人科を志す医師のうち約60%を占めています。しかし、出産・育児といったライフステージの変化によって「勤務継続が困難」「一度離職すると復職までが大変」といった理由で離職を余儀なくされるケースが少なくありません。このままでは、産婦人科医療全体の供給にとって大きな打撃となる可能性があります。そこで、W.L.B. は医師がライフステージに応じた働き方を選べる環境を整えるため、さまざまな支援を提供しています。
W.L.B. が提供する支援内容
再就職・復職支援
出産や育児で一度離職した女性医師に対して、復職支援や再研修を含めたサポートを提供する体制があります。具体的には、日本医師会(都道府県医師会などと連携した)「女性医師支援センター」や「女性医師バンク」を通じて、希望条件に合った医療機関を紹介し、就業まで支援を行っています。また、厚生労働省が実施する「女性医師等就労支援事業」や「病院内保育所事業」などとも連携しており、復職後の働きやすさにも配慮されています。
育児・家庭との両立支援
子育てと医師としての仕事を両立するための情報提供や支援先の案内も行われています。例えば、保育サービスを扱う団体の紹介、子育てタクシーの情報、病児保育の検索、ベビーシッター利用、休業・時短勤務制度の案内などがリストアップされています。家庭の事情や子どもの年齢に応じて柔軟に働き方を選べるようにするための取り組みです。
事業者(医療機関)へのガイド・助成金案内
医療機関側にも、女性医師の就労継続を促すための制度があります。たとえば、両立支援や時短勤務制度の導入、施設内保育所設置への助成金、ポジティブ・アクション支援など。こうした取り組みを実施・維持することで、医師自身だけでなく医療機関全体で働きやすさを向上させることができます。
成果と現在の課題
実際に、W.L.B. のような支援制度が広がるにつれ、女性医師の離職率は減少傾向にあります。たとえば、ある調査では2006年時点で平均17.8%だった産婦人科離脱率が、2013年には10.9%にまで減少しました。ただし、それでも医師不足、特に分娩を扱う産婦人科の医師不足は依然として深刻です。W.L.B. の支援だけでは解決しきれない構造的な問題が残っており、医療機関や社会全体での更なる理解と体制整備が求められています。
今後の展望
W.L.B. は、支援の枠組みを提供するだけでなく、医師の働き方を根本から見直すきっかけを社会に提示しています。24時間体制で命を守る現場において、医師自身の心身の健康を守ることこそが、結果として患者の安全と医療の質につながるという理念のもと、制度改善や勤務体制の見直し、両立支援の普及を進めています。
もしあなたやご家族が産婦人科医療に関わるなら、あるいは医療現場に興味があるなら、ぜひ一度 W.L.B. の支援内容を確認し、「こんな働き方も可能なんだ」と知ってみてください。
